断章のグリムIX
なでしこ・下
著/甲田学人 イラスト/三日月かける
それはまるで、枯れることのない手のように白い一本のユリ。
『──────お姉ちゃん』
悲嘆と暗闇の中で泣いていた金森梢枝の背後から、突然少女の声が囁かれる。背後の闇から聞こえてきた、小さく、くぐもった、しかし異様にはっきりと聞こえた声。忘れもしない、忘れるわけもない、しかし記憶の中以外ではあってはならない、死んだ妹の、“声”。
金森琴里の自殺を発端に、徐々に悪夢が浸蝕していく海辺の街。だが蒼衣は、ユリと物語の行方が分からぬまま、雪乃を置いて、地元の普通の日常に戻らなくてはいけない。そして悪夢は、蒼衣の予想を大きく裏切り、拡散していく──。
鬼才が贈る悪夢の幻想新奇譚(メルヘン)、第九幕!